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心臓血管外科

ニュース・お知らせ

大動脈瘤に対する新しい治療法 ーステントグラフトー

2012年2月 1日

全身に血液を送る大動脈は体の中で最も太い血管で、心臓から上向きに出た後、頭や腕などに血液を送る3本の血管を枝分かれさせながら弓状に左後方へ大きく曲がり、ほぼ背骨の前面に沿って腹部方向に下っています。

心臓から横隔膜までを『胸部大動脈』、横隔膜から下の部分を『腹部大動脈』といいます。 大動脈の中には高い圧力(血圧)がかかっているので、動脈硬化などで弱くなった部分があると、"瘤(こぶ)"ができやすくなります。血管の壁が薄くなって大きく膨らんでくる病気が『動脈瘤(どうみゃくりゅう)』です。
動脈瘤ができても血管の機能が低下する事はなく、ほとんどが無症状ですが、破裂すると激烈な胸痛や腰痛、大出血による意識障害などを起こし、突然死することもある恐ろしい病気です。

いったん動脈瘤ができてしまうと、自然に縮小することはなく、有効な薬物療法もありません。
大動脈瘤の多くは破裂しない限り無症状で、大きくなっていくと周囲の組織を圧迫して、胸部大動脈瘤なら咳、血痰、胸痛、背中の痛みが、腹部大動脈瘤なら腰痛や腹痛などがみられます。
すでにこの段階は破裂する危険性が高まっている状態で、大動脈瘤が大きくなって破裂すると大量出血を起こし急死する危険性があります。これによって年間に多くの人たちが命を落としています。
大動脈瘤は、もし破裂したらその死亡率は80~90%にも上るといわれています。
そのため、大動脈瘤は破裂する前に治療するのが原則です。
治療しないで放置しておくと、瘤の壁にできた血塊や動脈硬化片が剥がれて血管内に流れ出し、動脈の末端に詰まって障害を起こしてしまうこともあります。
大動脈瘤の治療法として、胸部あるいは腹部を切り開いて動脈瘤を確認し、その代わりに人工血管を縫い付けて埋め込む手術(人工血管置換術)を行うのが一般的です。

また最近では、血管に細い管(カテーテル)を挿入して人工血管を患部に装着する「ステントグラフト内挿術」が普及し始めています。
ステントグラフトによる治療は、身体にかかる負担が少ないのが特徴です。
ステントグラフトは、人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けた新型の人工血管で、これを圧縮して細いカテーテルの中に収納して使用します。
脚の付け根を4~5cm切開して動脈内にカテーテルを挿入し、動脈瘤のある部位まで運んだところで収納したステントグラフトを放出します。胸部や腹部を切開する必要はありません。
放出されたステントグラフトは、金属バネの力と血圧により広がって血管内壁に張り付けられるので、外科手術のように直接縫いつけなくても自然に固定されます。
大動脈瘤は切除されず残りますが、瘤はステントグラフトにより蓋をされることで血流が無くなり、次第に小さくなる傾向がみられます。
また、たとえ瘤が縮小しなくても、拡大を防止することで破裂の危険性がなくなります。

  利点欠点
ステントグラフト ・からだに負担が少ない
・従来の手術では麻酔や手術に耐えれない人でも対応できる可能性がある
・比較的小さな傷ですむ
・形によってはできない
・比較的新しい治療方法で長期間の成績がでていない
・術後もCTの検査を比較的頻繁に行う必要がある
・場合によっては追加の治療のため入院加療が必要である
人工血管置換術 周術期の合併症も比較的少なく安全で確実である。 ・少なくとも約2週間の入院が必要
・大きく切開するので術後より痛む

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