担当責任医:田崎 達也
日本内視鏡外科学会技術認定医:ヘルニア
日本ヘルニア学会評議員・ガイドライン委員
鼠径(そけい)ヘルニア・臍ヘルニア・腹壁ヘルニアは、多くの医療機関で治療が行われており、簡単な疾患と思われがちですが、施設、術者の経験により、成績(合併症、術後の疼痛、再発率)に違いがある、専門性の高い疾患です。再発、合併症の少ない手術を初回に受けることが非常に大切です。
JA広島総合病院外科では、小さな創で治療できる腹腔鏡手術を含めた、安全性、専門性の高い治療を行う目的で、ヘルニア専門外来を開設し、短期滞在手術を行っています。
他院で初回手術を受けられた後の再発症例も、積極的に受け入れています。
受付時間:木曜(11:00~)予約優先
- ・かかりつけ医からのFAX紹介システムで予約いただくとスムーズですが、その他、受診を希望される方は、平日の午後2:00から4:00の間に、当院外科外来(0829-36-3111)へお電話ください。
- ・緊急の場合は、専門外来以外でも診察いたします。
当科の実績・手術件数
そけい(鼠径)ヘルニアの症状と治療について
そけいヘルニアとはどのような病気?
「そけい(鼠径)」とは、太ももの付け根の部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。「そけいヘルニア」とは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。一般の方には「脱腸」と呼ばれている病気です。
そけいヘルニアの症状は?
立った時やお腹に力を入れた時に、もものつけねの皮膚の下に小腸などが出てきて柔らかいはれができますが、普通は指で押さえると引っ込みます。
このはれが急に硬くなり、押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなったり吐いたりします。 これをヘルニアのかんとんといい、急いで手術をしなければ、命にかかわることになります。
治療法
なるべく早めの手術が必要な場合と、経過をみることができる場合がありますので、まずは診察をうけられることをお勧めいたします。
症状の軽い男性では、経過観察が可能な場合がありますが、高齢女性では、かんとんをおこす可能性が高いため、経過観察は勧められません。
手術の方法は、従来から行われているそけい部切開法と、近年急速にひろがりつつある腹腔鏡手術の大きく2つの方法に分かれ、いずれもメッシュを用いた修復です。当科ではどちらも可能です。
腹腔鏡手術(TAPP法、TEP法)
腹腔鏡手術ではおへそに約1-2cmの小切開をします。他に5mmの創を2か所おき、手術をします。しばらくすると創部はほとんど目立たなくなります。
若年女性では、メッシュを用いない術式も行っています。
腹腔鏡手術は高度な技術を要するため、日本ヘルニア学会および国際ガイドラインでは、「十分習熟した外科医が行うこと」と記載されています。当科では、ヘルニア領域での日本内視鏡外科学会技術認定取得医(手術ビデオで審査され、合格率は約20%です)が担当しますので、ご安心ください。
そけい部切開法(プラグ法、リヒテンシュタイン法)
そけいヘルニアにおける短期滞在手術の流れ
そけいヘルニアは、かんとんさえしなければ生命にかかわらない病気であるため、安全に手術が行われることが何よりも大切です。そのため、当院では、全例、麻酔科専門医が麻酔を担当します。
手術の前日の午前中に、麻酔科専門医による診察があります。
手術の翌朝に退院は可能ですが、術後の痛みも多少はありますので、もう1泊ゆっくりしていただくことも可能です。
当科からの論文、発表(2014年~2019年)
論文
- 鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術の適応:広島医学 2014
- 腹腔鏡下修復術が有用であったスピーゲルヘルニアの1例:日本内視鏡外科学会雑誌2015
- 腹腔鏡所見から得られた成人女性鼠径部ヘルニアの特徴:広島医学2016
- 再発を繰り返した膀胱ヘルニアに対し、腹腔鏡下に修復した1例:日本ヘルニア学会誌2016
- TAPP法で修復した巨大鼠径ヘルニアの3例:日本臨床外科学会雑誌2017
- 成人臍ヘルニアに対する、腹腔鏡下修復術を含めた当科での治療方針と成績:日本ヘルニア学会誌2018
- 再発鼠径ヘルニアに対する、腹腔鏡を用いた治療戦略:広島医学2018
- Inguinoscrotal hernia containing the urinary bladder successfully repaired using laparoscopic transabdominal preperitoneal repair technique: A case report: Asian Journal of Endoscopic Surgery 2018
- 後期高齢者鼠径部ヘルニア症例の治療方針‐手術適応・麻酔・術式選択:広島医学2019
- 前方到達法で修復した両側上腰ヘルニアの2例‐手術適応と術式選択に関する考察‐日本ヘルニア学会誌2019
- Laparoscopic plug removal for chronic pain after inguinal hernia repair using the plug-and-patch technique: a case report. International Journal of Surgery Case Reports 2019
写真:日本内視鏡外科学会総会(2018年12月)、ヘルニアセッションでの司会
全国学会での発表
- 当院におけるTAPP導入の実際: 第12回日本ヘルニア学会学術集会 2014年
- TAPP導入初年度での、鼠径ヘルニア手術における術式選択:第13回日本ヘルニア学会学術集会 2015年
- TAPPでの腹膜閉鎖困難例に対する手技の工夫:第13回日本ヘルニア学会学術集会 2015年
- 腹腔鏡下修復術が有用であったスピーゲルヘルニアの1例:第13回日本ヘルニア学会学術集会 2015年
- 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術TAPPの標準化を目指して―再発ゼロを目指した十分な剥離範囲:第28回日本内視鏡外科学会総会 2015年
- 困難症例に対するTAPP-再発を繰り返した膀胱ヘルニアの経験:第28回日本内視鏡外科学会総会 2015年
- 成人女性鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術の有用性:第116回日本外科学会定期学術集会 2016年
- TAPP法の困難症例:第14回日本ヘルニア学会学術集会 2016年
- 罹患期間の長い日本ヘルニア学会分類I-3型症例に対するTAPP法のピットフォールと対策:第14回日本ヘルニア学会学術集会 2016年
- 私のこだわりの手術手技(腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術 TAPP):第78回日本臨床外科学会総会2016年
- 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は限定条件下で標準術式となり得る:第29回日本内視鏡外科学会総会 2016年
- 出血させない腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP):第29回日本内視鏡外科学会総会 2016年
- 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の適応を考える上での、JHSガイドラインの問題点と課題:第25回日本ヘルニア学会学術集会 2017年
- 巨大鼠径ヘルニアに対してTAPP法を行った3例:第25回日本ヘルニア学会学術集会 2017年
- TAPP法後に再発をきたした3症例:第25回日本ヘルニア学会学術集会 2017年
- 腸閉塞既往のある、再発鼠径ヘルニアに対するTAPP法の経験:第25回日本ヘルニア学会学術集会 2017年
- 罹患期間の長い陰嚢型外鼠径ヘルニアに対する,安全なTAPP法手技:第72回日本消化器外科学会総会 2017年
- TAPP法後再発症例のBefore/After:第2回ラパヘルエキスパートミーティング 2017年
- Transabdominal preperitoneal repair is useful for giant inguinal hernia:21st Asian Congress of Surgery,2017
- 腹膜前修復法後再発鼠径ヘルニアに対するTAPP法は是か非か:第79回日本臨床外科学会総会 2017年
- TAPP法後再発鼠径ヘルニア症例から考える、再発を防ぐために必要なこと:第30回日本内視鏡外科学会総会 2017年
- IPOM変法を考える 第3回ラパヘルエキスパートミーティング 2018年
- 成人臍ヘルニアに対する、腹腔鏡下修復術を含めた当科での治療方針と成績 第118回日本外科学会定期学術集会 2018年
- 前立腺全摘術後に発症した鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の成績と問題点 第16回日本ヘルニア学会学術集会 2018年
- 外科修練医に対する鼠径部ヘルニア手術教育 第16回日本ヘルニア学会学術集会 2018年
- 抗血栓療法患者に対する鼠径部ヘルニア手術症例の検討 第16回日本ヘルニア学会学術集会 2018年
- World Guidelineの「Plug法は推奨されない」は妥当か―再発所見からの考察‐ 第16回日本ヘルニア学会学術集会 2018年
- TAPP法で診断した成人女性鼠径部ヘルニアの検討 第16回日本ヘルニア学会学術集会 2018年
- 後期高齢者の鼠径部ヘルニアに対する手術適応と麻酔法・術式選択に関する検討 第80回日本臨床外科学会総会 2018年
- 再発鼠径ヘルニアに対して安全にTAPP法を行うためのポイント 第31回日本内視鏡外科学会総会 2018年
- 後期研修医に対する腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術の教育 第31回日本内視鏡外科学会総会 2018年
- TAPP法後再発症例の振り返り 第5回ラパヘルエキスパートミーティング 2019年
- International Guidelines for Groin Hernia Management発表後の当科での術式選択 第119回日本外科学会定期学術集会 2019年
- 成人女性鼠径部ヘルニアにおける腹腔鏡手術の利点とLPEC法の位置づけ 第18回LPEC研究会 2019年
- 大きな陰嚢型鼠径ヘルニアに対するTAPP法の有用性と困難性 第17回日本ヘルニア学会学術集会 2019年
- 様々な腹膜前修復法が推奨されることによる、再発鼠径部ヘルニア治療の困難性 第17回日本ヘルニア学会学術集会 2019年
- 前立腺全摘後鼠径ヘルニアに対するTAPP法、Plug法、Lichtenstein法 第17回日本ヘルニア学会学術集会 2019年
- 後期研修医による腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術の習得への取り組み 第17回日本ヘルニア学会学術集会 2019年
- 前方到達法で修復した両側上腰ヘルニアの2例 第17回日本ヘルニア学会学術集会 2019年
- 嵌頓鼠径部ヘルニアに対して腹腔鏡手術は第一選択となりうるか 第74回日本消化器外科学会総会 2019年
- 私が考えるシンプルなTAPP法-ヘルニア嚢処理と背側剥離― 第15回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会 2019年
- TAPP法を第一選択としている当科における、非還納性鼠径ヘルニアに対するアプローチ 第81回日本臨床外科学会総会 2019年
- TAPP法におけるメッシュ選択の変遷とその成績、注意点 第32回日本内視鏡外科学会総会 2019年
- TAPP法において、鼠径部切開法より良好な成績を維持するために 第32回日本内視鏡外科学会総会 2019年