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大腸癌肝転移について

2012年11月 1日

大腸癌肝転移に対する治療は、肝切除術が基本であることは今も昔も変わりませんが、近年、オキザリプラチン、イリノテカンといった新規薬剤を用いた新規化学療法にベバシズマブを始めとする分子標的治療薬を組み合わせることにより、治療戦略が多様化し、また、成績も向上しています。

当科でも新規化学療法導入後、平成23年12月までに大腸癌肝転移症例45例(平均年齢67歳、男女比29:16)に対して肝切除術を行って良好な成績を挙げています。

肝切除術前に化学療法を行うことにより、切除不能であったものが切除可能になったり、初めから切除可能であっても病巣が縮小することにより、切除範囲を小さくすることが出来ることがあります。当科でも肝切除術前化学療法を積極的に行っております。特に同時性肝転移症例(ここでは大腸癌診断時に肝転移があるもの)では、まず大腸の原発巣を切除し、その後化学療法を行って肝切除を行うのを基本方針としています。奏功率(抗癌剤治療が効いたと判断されるもの)は52.6%で、中には病変が全く消失したケースもあります。有害事象(抗癌剤の副作用)はありますが、薬剤の減量や休薬で軽快しており、また、肝切除術前化学療法を行わなかった場合と比べて肝切除術後の合併症が高率になったり、在院日数が長くなることもなく、安全に施行可能となっています。

肝切除術後も再発予防の観点から基本的に術後補助化学療法を行っていますが、約半数に再発を認めているのが現状です。しかし、再肝切除を含めた集学的治療により、生存率の向上を目指しています。当科における大腸癌肝転移切除例の5年生存率は63.9%、5年無再発生存率は41.3%で、全国的に見ても良好な成績です。

大腸癌肝転移症例に対する肝切除術前後の分子標的治療薬を含めた新規化学療法は安全に施行可能で、奏功率や生存率は良好であり、有用であると考えております。

(第67回日本消化器外科学会総会 シンポジウムにて発表)

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