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碓井医師がFMはつかいち「はつかち医療情報コーナー」に出演しました。

2014年6月9日

痛風の話 第1話

質問:
痛風とはどんな病気でしょうか。
碓井:
血液の中に尿酸という物質が多くなることで起きる病気です。尿酸の漢字はおしっこの尿と酸性・アルカリ性の酸という字でできています。尿酸が高くなる状態,これを高尿酸血症と言いますが,この高尿酸血症が続いていると,突然,関節が腫れ,猛烈な痛みが出ることがあります。これを痛風,あるいは痛風発作と言います。痛風とは痛いという漢字と風の漢字が並んでおり,"風が吹いても痛い"と言うように,人間のかかる痛みの中で最も強い痛みと言われています。昔からの病名で痛いという漢字があるのは,この痛風だけです。いかに強い痛みか分かると思います。
質問:
どこが痛むのでしょうか。
碓井:
一番よく見られるのは,足の親指の付け根の関節で全体の約70%はここに痛みが来ます。赤く腫れ,歩くことができないほどの痛みが出ます。
質問:
痛風にかかる人は多いのでしょうか。
碓井:
どんどん,多くなっています。25年前に比べると約4倍に増えています。日本全国で100万人弱の人がかかっているので,廿日市市では約900人がかかっている計算になります。その9割は男性です。女性はかからないと思われている人もいますが,特に閉経後は女性もかかりやすくなります。
質問:
年齢の高い男性が痛風にかかるのでしょうか?
碓井:
今から50年位前だと,50歳代でかかる人が多かったのですが,今では30歳代でもっとも多く発症しています。20代でもなる人がいます。
質問:
そのような痛風の痛みが出た場合はどうすればいいのでしょうか。
碓井:
病院あるいは診療所で痛みを取る薬をもらいます。痛みがある時だけ,短期間の服用になります。また,発作が起こりそうな予兆,これは個人差がありますが,びりびりする,ぞわぞわするなど感じると,予防的に飲む薬もあります。
質問:
なぜ痛風にかかるのでしょうか。
碓井:
最初に言いましたが,血液の中に尿酸が高い状態,高尿酸血症が続く事が問題です。
尿酸は遺伝子の中などに含まれるプリン体という物質が分解されてできるものです。プリン体のプリンはカタカナ,体(たい)はからだの漢字を書きます。また,食品に含まれるプリン体も体の中に入って尿酸に分解されます。
すなわち尿酸は必要なくなったプリン体が体外に排泄されるための最終的な老廃物と言えます。尿酸のほとんどは腎臓から尿の成分として体の外に捨てられます。そこで,これからは尿酸の動きに注目してお話を続けます。
質問:
尿酸が高いか低いかなどはどうやって調べるのでしょうか。
碓井:
尿酸というのはその名前に尿と入っており,おしっこ,尿にでるのですが,それが高いか低いかは採血して,血液の中の濃度を調べます。血清1デシリットルに7ミリグラム以下が正常です。
質問:
なぜ尿酸は高くなるのでしょうか。
碓井:
通常は,体で作られる尿酸の量と,体の外に排泄される尿酸の量はバランスが取れています。しかし,何らかの理由により,そのバランスが崩れることがあり,その時には体内の尿酸が増えます。バランスの崩れる理由は3つあります。1つは,作られる尿酸の量が多くなること,2つ目は,腎臓からの排泄が悪くなること,3つ目は,食事として体外から多くのプリン体を取る事です。これらが1つ,あるいは複合して,体の中に尿酸の量が増えていきます。
質問:
尿酸が高くなると痛風になる事以外になにか悪いことが起きるのでしょうか。
碓井:
血清1デシリットルに7ミリグラム以下が正常ですと言いましたが,これを超えると,体のいろいろな部位で尿酸の結晶ができるようになります。関節の中に尿酸の結晶ができると,痛風の発作につながります。また,尿中で結晶化が起こると尿路結石となり,これも激痛を伴う結石の発作に悩まされることになります。ただ,痛風や尿路結石の発作がないときには,症状がありません。長期間,尿酸が高い状態が続けば,腎臓の働きも落ちて行くことがあります。狭心症,心筋梗塞にもなりやすいと言われています。
質問:
先ほど言われた症状等がまるでない場合,自分の尿酸値が高いか低いかはどこで調べてもらえますか?
碓井:
人間ドックや,廿日市市の実施している特定健診でも測定しますし,会社等に勤められている人も多くは定期健康診断で調べています。かかりつけの医療機関でも採血して調べることができます。

 

痛風の話 第2話

質問:
これまでの話で尿酸の値が高いことが悪い事と分かりました。では,高い場合,これを下げるにはどうすれば良いでしょうか。
碓井:
尿酸の値に対応した治療を考えます。尿酸値が7を超えていれば,まず生活習慣の改善を考えます。尿酸値が8以上で腎臓病,尿路結石,高血圧,心臓病などの合併がある場合は薬による治療を考えます。尿酸値が9以上になると合併症がなくても薬による治療を始めます。 尿酸値が8以上の方は,かかりつけ医等にご相談ください。
質問:
尿酸値が高い場合の生活の改善はどのような事をするのでしょうか。
碓井:
3つあります。食事,飲酒,運動です。これを順番に説明していきましょう。 最初は,食事についてです。前回お話ししましたが,体で作られる尿酸の量と,体の外に排泄される尿酸の量のバランスが崩れる理由の 1つは,食事から多くのプリン体を取る事です。すなわち,食事の内容と量が問題になってきます。
質問:
どのようなものにプリン体が多く含まれていますか?
碓井:
同じ重さの鶏の卵1個とレバーではどちらがプリン体が多いでしょうか。前回説明しましたが,プリン体は遺伝子の中に含まれています。それが分かれば,細胞の数がポイントだと分かります。すなわち,鶏の卵は大きくても細胞は1つです。レバー,肝臓ではどうでしょうか。レバーの細胞はとても小さく顕微鏡でしか見えません。細胞の数はレバーでは卵より圧倒的に多いので,プリン体も多いと分かります。プリン体は動物や魚の内臓に多く含まれます。具体的には,豚,牛,鶏などのレバー,魚の白子,アンコウの肝などはプリン体が多い食品です。そのほか魚の干物も水分が少なくなり,重量あたりの細胞数が増えるので,プリン体が多くなります。
質問:
そのほか食事について大切なものはありますか?
碓井:
プリン体を含む食物をたくさん食べないことも大切ですが,最近では食事の量を減らしていくことも重要であると考えられるようになっています。尿酸値が高く,肥満の人では,食事の量に注  意して,減量するとそれに応じて尿酸値が低くなることが多いのです。
また,砂糖や果物に含まれる果糖の取りすぎも尿酸値を上げていきます。すなわち,甘いお菓子や果物を食べすぎないことも大切です。
水分をしっかり取ることも重要で,尿が1日で2リットル以上出るくらいしっかり水分を取ることが推奨されています。
質問:
飲酒,アルコールを飲むことはどうでしょうか。
碓井:
どんなアルコールでもたくさん飲むと尿酸値が上がったり,痛風の発作が出やすくなります。特にビールがよくやり玉に挙がりますが,これは他のアルコール飲料よりプリン体が多い事,また,カロリーが高く肥満になりやすいためです。そこで,カロリーオフ,プリン体カットのビールが売り出されているわけです。しかし,どんな種類のお酒でもアルコールは腎臓から尿酸が出ることを妨げる事を覚えていなければいけません。ただ,1滴も飲んではいけないわけではありません。尿酸の値にあまり影響を及ぼさない量は,一日,日本酒で1合,ビール500ml,ウィスキー60ml程度と言われています。
質問:
3番目の運動はどうでしょうか。
碓井:
特に太った人には運動をすることが奨められています。 週に3回程度の軽い運動をおこない,適正な体重に戻すとよいでしょう。ただ,過度な運動は逆に尿酸値を上げてしまうので,そこそこにすることが大切です。
質問:
そのほか,生活の中で注意することはありますか。
碓井:
ストレスも尿酸を上げると言われています。尿酸は腎臓から体の外に排泄されますが,ストレスがあるとこの排泄を抑えるため,血液の尿酸を上げてしまうようです。我々は,生きている限り,ストレスなしというわけにはいきませんが,うまくコントロールして生活することも大切です。
質問:
以上言われたことをしっかり実行しても,尿酸の値が8あるいは9から下がらない場合はどうすればよいでしょうか。
碓井:
内科で相談してください。合併症などを考慮し,必要に応じて薬を使って尿酸の値を下げます。最近,尿酸を下げる効果のある新しい薬が40年ぶりに出ました。尿酸を体の中で作るのを抑える薬で副作用が少なく,効果が強く安定しています。ただ,薬を飲んでしまえば生活習慣はどうでもいいのかと言うと,そうではありません。あくまでも薬は補助的に使うものと思い,先ほど述べた良い生活習慣を続けてください。

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